SESエンジニアが偽装請負を回避する方法は?判断基準と注意点

エンジニア不足解消の手段として、外部からエンジニアを補充する「SES(システム・エンジニアリング・サービス)」を活用する企業が増加。しかし一方で、SES契約を隠れみのとした偽装請負が横行するという深刻な問題も発生しています。そこで本記事では、SESエンジニアが偽装請負によるトラブルに巻き込まれないよう、偽装請負の判断基準と注意すべきポイントについて紹介していきます。

目次

偽装請負とはなにか

常駐先となるクライアントから直接指揮・命令を受けないSES契約を結んでいるにも関わらず、実態は派遣契約のようにクライアントが直接SESエンジニアに指揮・命令をしていることを指します。

これは、意図的に行われていることもありますが、なかには企業にそのつもりがなくても偽装請負になっているというケースもあります。

偽装請負と判断された場合のリスク

偽装請負が労働派遣法違反と認定された場合、どんなリスクがあるのでしょうか。

クライアント側(発注者)

労働派遣法第49条の2に基づき、厚生労働大臣から是正措置勧告が行われます。勧告に従わない場合は社名が公表されることもあります。さらに、プロジェクトの遅れや中止により、投資した金額を回収できないリスクも発生するため、企業の財務状況に悪影響となることは確実です。

ベンダー側(受注者)

刑事罰として、労働派遣法第59条第2号に基づき、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、行政指導として厚生労働大臣から助言や指導が入ることも。さらに、同法第48条や第49条に基づいて改善措置命令を受けることも十分にあり得るでしょう。

SESエンジニア(労働者側)

偽装請負を解消するため、契約の解除やプロジェクトの停止が行われる場合があり、それに伴い、エンジニアの雇用状況が不安定になる可能性もあります。また、不適切な契約トラブルに巻き込まれたストレスや、収入への不安などから、精神的健康に影響を悪影響を受ける可能性もあります。

契約ごとの違いについて

上述したようなトラブルに巻き込まれないようにするためには、SESエンジニア自身もSES契約、請負契約、派遣契約の特性について理解しておくことが大切です。では各契約形態ごとにどんな特徴があるのか、みていきましょう。

SES契約(準委任契約)

エンジニアはクライアント先に常駐して作業を行いますが、クライアントから直接指示や命令を受けることはありません。また、報酬は勤務時間に基づいた金額を受け取るため、作業の成果物に対して責任は発生しません。

請負契約

クライアントから直接的な指示や命令を受けないことはSES契約と同様ですが、作業場所はクライアント先もしくはベンダー側のどちらかになります。また、報酬に関しても成果物の納品やクオリティによって発生するため、エンジニアは成果物に対して責任を負う必要があります。

派遣契約

クライアント先に常駐して作業を行い、働いた時間に基づく報酬を受け取ります。SES契約や請負契約と異なり、クライアントから直接指示や命令を受けながら作業を行いますが、成果物に対する責任は発生しません。

偽装請負の判断基準

派遣契約と請負契約(SES契約を含む)を判別する基準は、現在の厚生労働省が発表した告示「労働者派遣事業と請負による事業の違いに関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」や厚生労働省が提供するガイドライン「労働者派遣と請負契約を正しく進めるための指南」に記載されています。内容として、主に以下2つの点を満たしているかどうかで判断されます。

雇用する労働者をベンダー(受注者)自らが直接利用すること

受注者がSESエンジニアへの業務指示・労働時間を直接指示しているかどうかということを指します。

請け負った業務を自己の業務として処理すること

SESエンジニアが業務に必要なパソコンなどをベンダー側が用意すること。また、SESエンジニアが業務の専門知識をもっていることなどを指します。

業務内において要注意である9つのシーン

実際に現場で起こり得る注意しなければならないシチュエーションとして、次のようなものがあげられます。

例1:クライアントがSESエンジニアの勤務時間を決めている
例2:クライアントのパソコンやプリンターなどの設備を使わせている
例3:クライアント側のメンバーが直接SESエンジニアに作業指示を出している
例4:クライアントがSESエンジニアの作業工程、タスクを決めている
例5:クライアントがSESエンジニアの評価や昇給、昇進を決定している
例6:SESエンジニアがクライアント側の社員と変わらない待遇や福利厚生を受けている
例7:SESエンジニアがクライアントの社内研修などに参加している
例8:SESエンジニアがクライアントの社内ツールやメールアドレスを使用している
例9:クライアントの業務遂行方法や業務量を受注者企業が自由に決定できない

上記のようなシチュエーションは、法律の観点で、クライアントとSESエンジニアの間に労働関係が存在することを示唆する可能性があり、偽装請負と判断されるリスクがあります。

トラブルに巻き込まれないための対策

SESエンジニアは偽装請負のトラブルを避けるために、以下の点に注意をしながら自身でも対策を行うことが必要です。

ポイント1:契約内容の確認

契約書はエンジニアの役割や責任、報酬の形式などを明確に示す重要なものです。そのため、事前に契約内容についてしっかりと確認し、理解しておくようにしましょう。また、契約時点で偽装請負の疑いがないかどうかチェックしておくことも大切です。

ポイント2:指揮命令の有無

SES契約の場合、クライアントからSESエンジニアへ直接の指揮や命令は発生しません。しかし、実態として現場で直接の指揮や命令をうけた場合や見かけた場合は、偽装請負となる可能性があることを考慮し、速やかに相談や報告をしましょう。

ポイント3:報酬形態の確認

報酬形態についても確認するようにしましょう。通常、SESエンジニアの報酬は労働時間や日数に基づいて決定されます。契約内容と実際の報酬形態が異なる場合は、偽装請負の可能性があるため、注意をしましょう。

ポイント4:成果物の責任範囲の明確化

成果物の責任の有無についても事前に確認し、明確化しておくことが必要です。SES契約では、エンジニアが提供した成果物に対する責任は発生しません。しかし万が一ミスやトラブルが発生した場合に、責任の所在をハッキリさせておくことで迅速かつ適切な対応が可能となります。

ポイント5:使用する機材や設備をだれが用意しているか

パソコンなどの機材や設備はベンダー側での用意が必要です。クライアント側の機材や設備を使用する場合、契約で定められた範囲内での使用を心がけましょう。契約内容以外の機材を使用した場合、雇用関係があると誤解されかねないため、注意をしましょう。

トラブルを避け、安心のエンジニア生活を

エンジニア不足の問題を抱える企業にとって、SESエンジニアの活用はとても有効な手段。需要が高いことから今後もSESエンジニアの数は増えていくことが予想されますが、契約の特性について理解をしておかないと、トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。何をしたら偽装請負と判断されてしまうのか、日ごろどんなことに注意をすればいいのかを知り、安心のエンジニア生活を送りましょう。

また、案件獲得にはフリーランスキャリアの利用をぜひ検討してみてください。これまでの経験やスキルに応じた案件を紹介させて頂きます。

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