フリーランス新法を徹底解説!フリーランサーが知るべきポイントとその影響

2023年4月28日に法案が可決された「フリーランス新法」をご存知でしょうか。正式名称は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)。メディアやニュースで連日話題になっていたので、聞いたことがある方も多いと思います。

ここ数年での“働き方の多様化”に伴って、自分の知識や技能を生かして個人で事業を行うフリーランスが増えてきました。それと同時にフリーランスが不当な契約やトラブルに巻き込まれる機会も増加しており、日本中で問題視されてきました。

フリーランス新法とは、会社組織に属さずに個人で働くフリーランスの労働環境保護を目的とした法律です。2024年秋頃の施行が予定されています。本記事ではフリーランス新法の概要や制定の背景、具体的な内容などを解説します。

目次

フリーランス新法とは?

そもそもフリーランス新法とはどのような背景で施行されるのでしょうか。

フリーランス新法が制定された背景

これまでの日本では、企業による雇用を前提に労働や雇用、社会保障に関する政策が発展してきました。長年そのようなカタチでやってきたのですが、時代と働き方が多様化して個人で働くフリーランスが増えていくようになり、取引上の不公平や不利益を被る機会が多いことが問題となってきました。不当な契約や低い対価など…国も看過できなくなったのが制定の背景にあると言われています。

内閣官房によれば、2020年のフリーランス人口は約462万人。コロナ禍の影響もあり現在はもっと増えているでしょうし、今後も増えると考えられています。そのために急ピッチでの法案成立がされました。

フリーランス新法の概要

ここからはフリーランス新法の概要についてより具体的に見ていきましょう。

繰り返しになりますが、

フリーランス新法とは「フリーランスの取引を適正化し、安定した労働環境を整備することを目的に、発注者に対して業務委託の遵守事項などを定める」法律です。これまで弱い立場だったフリーランスを保護することが狙いで、2024年秋頃までに施行が予定されています。

このフリーランス新法では、フリーランスは「特定受託事業者」であると定義されています。

定受託事業者とは、物品の製造や情報成果物の作成または役務の提供を指す「業務委託」をされる相手方であり、従業員を雇わない事業者のことです。

一方、フリーランスに業務委託を行う側を「特定業務委託事業者」と言います。法人でも個人事業主でも、継続的な雇用を行っている場合は「特定業務委託事業者」とみなされます。※人を雇っている場合でも、短期間の一時的な雇用であれば「特定受託事業者」にあたるなど、例外はあります。

フリーランス新法では、「フリーランスが受託した業務で安心して働けるための制約」や、事業者が業務委託を行う際に「フリーランスが不当に扱われないための遵守事項」などが定められています。その件は、次でご説明します。

フリーランサーにとっての主要なポイント

「フリーランスが受託した業務で安心して働けるための制約」や、事業者が業務委託を行う際に「フリーランスが不当に扱われないための遵守事項」は次に当たります。

契約条件を書面で提供する

事業者がフリーランスに業務委託をする際は、契約の条件を書面またはメールで明示しなければなりません。発注する側が特定受託事業者(フリーランス)であっても、このルールは適用されます。

また、継続してフリーランスに業務委託をしている場合、中途解約については原則として中途解除日あるいは契約終了日の30日前までに予告しなければなりません。ただし、即日契約解除となる条件を最初に定めておくことは可能です。不法行為や契約違反などの禁止行為が事前に明示されており、合意がとれている場合はそれに従う必要があります。


報酬は60日以内に支払う

事業者はフリーランスから成果物を受け取って検品を終えた後、60日以内に報酬を支払わなければなりません。

「月末締め/翌月末払い」とする場合は最大60日以内となるため問題ありませんが、「月末締め/翌々月15日払い」では最大75日の期間が開くため、フリーランス新法の遵守事項に抵触します。

※フリーランス間での委託の場合は、支払期日の取り決めはなく、60日を超過しても違法とはなりません。

不特定多数に対する募集情報は適切に行う

フリーランスの方にとって、案件を獲得する際に利用される方が多いだろうクラウドソーシングサイトやSNS、広告での話になります。事業者が業務委託先を募集する場合、正確かつ最新の募集情報としなければなりません。虚偽の内容や誤解を招く表示は禁止されます。

フリーランスが不当に扱われないための遵守事項

フリーランス新法では、業務委託を行う事業者はフリーランスに対して下記1番〜5番の扱いを禁じられています。また、6番・7番の行為によってフリーランスの利益を不当に害してはならないと定めています。

出典:内閣府「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」

  1. フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物の受領拒否
  2. フリーランス側の責めに帰すべき理由のない報酬の減額
  3. フリーランス側の責めに帰すべき理由のない成果物などの返品
  4. 相場に比べて著しく低い報酬の不当な決定
  5. 正当な理由のない指定商品の購入または役務の利用の強制
  6. 委託する事業者のために、金銭、役務そのほかの経済上の利益の提供を要請すること
  7. フリーランス側の責めに帰すべき理由のない給付内容の変更、またはやり直しの要請

フリーランス新法の影響

ではフリーランス新法によってフリーランスにどのような影響があるのでしょうか。

フリーランスにとってポジティブな影響

フリーランス新法が制定されたことの受発注者双方のメリットとしては、一定のフリーランスに対する保護の内容が明確化されたことと言えるかもしれません。

これまでフリーランス(個人事業主や個人で営む事業者)は民法や商法といった規律しか存在せず、どのような場合が保護対象になるのか、どの程度の権利が保護されるのかが曖昧でした。

トラブルが発生した際には基本的に裁判所での司法判断を求める以外に選択肢がなく、いざ相談しても、権利保護の有無・範囲が不明瞭であるから行政では対応できない場合が大半。圧倒的に弱い立場のフリーランスは、泣き寝入りすることも少なくありませんでした。

フリーランス新法では、フリーランスの権利保護の範囲や法令違反の場合の所管当局(公正取引委員会)が明確化されたことから、これらトラブルに対する選択肢が増え、スムーズな解決に資することが期待されています。

事業者はフリーランスの労働環境整備にも努めなければいけない

フリーランスは組織との雇用関係がないため、労働基準法などの法令が通常は適用されませんでした。今回のフリーランス新法では、フリーランスの労働環境整備も含まれています。

たとえば、

・フリーランスからの申し出に応じて出産や育児
・介護と業務との両立に配慮すること
・ハラスメント行為に対する相談対応

など、必要となる体制整備を求められています。

※対象となるのは「継続的業務委託」のため、一度限りの契約の場合は対象となりません。

フリーランス新法の課題や注意点

フリーランス新法は、2023年9月の段階でまだ未確定な部分も非常に多く、今後正式に国から広報される内容に対して、アンテナを張って情報収集をする必要があります。

法案施行後は、定められた義務や禁止事項などを守らなければ、行政から指導・勧告を受ける可能性もありますので、事業者にとっては義務や責任が増加したことは否めません。

「フリーランス保護新法」の内容について、今後変更となる可能性も十分にありますが、現時点で対応しておいた方が良いポイントがありますので、ご紹介します。

フリーランス新法の施行に伴って、事業者が対応すべきこと

  1. 業務委託契約書ならびに業務委託募集内容のフォーマットを作成する。
  2. フリーランスの就業環境を意識し、社内体制整備を進める。
  3. フリーランス新法に関わる対応マニュアルを作成し、社内周知を徹底する。
  4. フリーランス新法を遵守することを対外的にも発信する

フリーランサーが新法施行後にすべきこと

続いてフリーランサーが新法施行後にするべきことについて解説します。

書面などによる契約条件の明確化

フリーランス新法は、発注者側の義務を定める法律のため、受注者となるフリーランスに対して法律上の義務が課せられることはありません。

しかし、これまで書面などによる契約条件の明確化をしないままサービス提供をしていた場合は、事前の書面等の交付によって契約条件が明確化されるようになります。そのため、契約上の義務を履行できない場合は、契約不履行という事実も明確化されてしまいます。

契約不履行となれば、最悪の場合、発注者側より損害賠償請求等が行われる可能性もあります。フリーランスは業務を開始する前の契約時に契約に係るリスクを認識し、明示された条件等を確認の上、これまで以上に契約上の義務を履行する意識を持つことが求められます。

こういう仕事なんだけど、やってくれない?

いいですよ!

といった口約束は絶対にダメです。発注者と受託者の間で、契約書・発注書・メール・チャットなどで双方が記録として参照できる形で残すことが求められます。これは徹底しましょう。

まとめ

フリーランス新法での一番のポイントは、取引条件の明示が義務化されることです。

「フリーランスが受託した業務で安心して働けるための制約」「 フリーランスが不当に扱われないための遵守事項」が国から正式に定められた訳ですので、事業者とは対等な関係です。フリーランスの方は堂々と自身のスキルを発揮できる仕事をしていきましょう。

また、案件獲得にはフリーランスキャリアの利用をぜひ検討してみてください。これまでの経験やスキルに応じた案件を紹介させて頂きます。

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