フリーランスが気をつけるべき法律、税金、保険、契約について解説

デザイナーやITエンジニアなどのクリエイターで、会社員を辞めてフリーランスとして活動する人々が年々増えています。フリーランスは会社員とは違い、自身が請け負った仕事の量や単価によって収入が決まるため、独立した“プロフェッショナル”として、自身の経験や技術、創造性を発揮して、業務に挑んでいかなければいけません。いわば、“独立した職業人”としてビジネス活動をしていくということは、ビジネスや法律に関する幅広い問題にも対峙していかなければいけない、ということでもあります。

そこで本記事では、フリーランスとして働く際に知っておくべき法律や税金、契約方法、保険などのことを解説。経営パートナーとして士業の専門家をつけるメリットも紹介します。

目次

第1章:フリーランスが知っておくべき税金や契約、保険のこと

▼税のことに関して

個人事業主は、毎年2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。この確定申告は、基本的に自身の所得税を算出して申告・納税するものです。個人事業主が納税を義務付けられている税金は基本的に以下の4つがあります。

・所得税および復興特別所得税

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの間に得た収入から経費を引いた「所得」に対して課される国税です。所得には税法上、事業所得のほか不動産所得や譲渡所得、雑所得などがあり、全10種類に分類されています。

所得税の金額は、すべての種類の所得を足したあと、医療費など所得控除分を引いた額に、税法で定められている税率を掛け、控除額を差し引くことで求められます。

・消費税

消費税は商品やサービスの消費に対して課される税金です。個人事業主は、売り上げ時に買い手から受け取った消費税分から、自分が仕入れや経費で支払った消費税分を引いた差額を、原則翌年の3月31日までに申告・納税します。

個人事業主には事業者免税点制度が設けられています。これは前々年における課税対象売上高が1,000万円以下であれば、その年の消費税納税が免除される制度です。2023年10月1日からインボイス制度が導入されることになり、課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、原則「適格請求書の保存」が必須となります。

この適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録されている課税事業者のみで、免税事業者は適格請求書を発行できません。インボイス制度の導入後も変わらず取引を続けたいのであれば、免税事業者は課税事業者になることを検討する必要があります。

・住民税

住民税は、毎年1月1日時点に住所事業所を置いている都道府県及び市区町村に納める税金です。

毎年、確定申告後に市区町村から住民税課税決定通知書が送付されます。一括または年4回に分けて納税を行います。

・個人事業税

個人事業税とは、法律で定められた業種の事業を行っている場合に課される税金。

事業税のかかる業種は都道府県ごとに決められており、事業や地域によって税率は異なるので、各自治体のホームページなどで確認しましょう。

▼保険のことに関して

フリーランスは会社員に所属していた頃とは違い、健康保険と国民年金への加入・支払いを自身で行うことになります。会社員時代と比べて保険料も大幅にアップしますのでご注意ください。フリーランスが加入できる公的保険は、以下のようなものがあります。

・国民健康保険
・国民健康保険組合
・前職で所属していた会社の健康保険の任意継続
・家族の扶養に入る

また最近では、フリーランスに特化した「民間保険」も多数ありますので、加入した方が安心で良いかもしれません。

▼契約のことに関して

フリーランスになると、クライアントとの契約は自分自身で締結することになります。

会社員のように

法務関係の部署に任せておけばいい

というわけにはいきません。

契約書の内容は自身でしっかり理解しなくてはならないし、自身で契約書を作成する機会も増えてくるでしょう。フリーランスはどんな場面でどういった契約書を交わすのか、契約書にはどんな内容を記載するべきなのかなどは、第2章で解説いたします。

第2章:フリーランスにとって、「契約」は一番大事な業務

▼なぜ契約が必要なのか?

フリーランスにとって大きな問題となるのが、クライアントによる報酬の未払い。

こんなことは滅多に起きないでしょ?

と思われるかもしれませんが意外と多いんです。

月末締め翌月支払いのサイクルを考えていたら違っていたり、銀行振込ではなく手形での支払いであったり、

本当に?

ということがビジネスでは非常によく起こります。

フリーランスにとって、自身の時間を割いて業務や成果物を提供しても、納品後に難癖をつけられて報酬を支払ってもらえない事態になれば、事業運営や自身の生活にも大きな打撃を受けてしまいます。万が一報酬の未払いに関して、裁判や調停などの法的措置を講じる場合は、証拠が必要です。

契約書は、

どのような業務・成果物を提供すればいくらの報酬を支払ってもらえるのか?

という契約内容を明示する書面であり、お互いが記載内容を認めて署名・押印するので法的にも効力をもつ証拠となります。

<フリーランスが契約書をつくる理由>

・請け負う業務範囲と金銭の明確化
・万が一のトラブル回避に役立つ
・不当な要求を防止する効果がある
・知的財産の帰属や利用形態がはっきりする 等

<結ぶべき契約書の一例>

●業務委託契約書

企業が自社の業務の一部を外部に委託する際に結ぶ契約が「業務委託契約」です。クライアントから外注を受けた時に結ぶ一般的な契約形態だと言えます。業務委託契約を結ぶ際に交わすのが「業務委託契約書」です。コンサルティング業務やITシステムの保守業務などは、業務そのものが重要で成果物は発生しません。ですので“業務委託”契約になります。

●業務請負契約書

クライアントが自社に必要な成果物を外注する際に結ぶのが「業務請負契約」です。業務請負契約を結ぶ際は「業務請負契約書」を交わします。デザイナーやITエンジニアなどは成果物が求められるので、業務請負契約が適しています。

●秘密保持契約書

技術的な情報や個人情報を扱う機会の多い業務では「秘密保持契約(NDA)」を結ぶ機会が多くなります。秘密保持契約を締結する場合の契約書が「秘密保持契約書」です。業務で知り得たクライアントの機密情報について、契約締結時に予定している用途外で使用したり、他人に開示したりといった行為を禁止する目的で結びます。

第3章:フリーランスは、知的財産権や著作権も徹底しよう

デザイナーやITエンジニアなどのクリエイターは常に著作物を制作しているため、「知的財産権」「著作権」と密接な関係にあります。

たとえば、あなたがクライアントに納品した制作物を、後日クライアントが勝手にいじってリニューアルをしました。実はこの場合、著作権侵害にあたります。

でもなかなかクライアントに

著作権侵害ですよ!

とは言いにくいですよね。

だからこそ、第2章で述べた契約書を取り交わすことが大事になってくるのです。知的財産権や著作権は、少し複雑な内容でもあるので、ここで簡単にご紹介させてください。

▼「知的財産権」は、「著作権」と「産業財産権」の二つにわけられます。

「知的財産権」とは、人間の知的活動により生み出されたアイデアや創作物を保護するためのものです。

特許権実用新案権意匠権商標権などの産業の発展を目的とする「産業財産権」、文化の発展を目的とする「著作権」など、その内容は多岐にわたります。

●著作権

文芸、学術、美術、音楽等を創作的に表現したものを、第三者に無断で利用されない権利。

著作権は『作品を完成させると同時に自動的に発生する権利』ですので、申請や登録などは必要なく、なんなら明示する必要もありません。「著作権を譲渡します」とか「放棄します」と宣言しない限り、創作した人が著作権者となります。ちなみに、著作権の侵害は「10年以下の懲役」又は「1000万円以下の罰金」という罰則規定が設けられています。

●産業財産権

意匠権、商標権、特許権、実用新案権等の権利を一般的に指しており、新しいデザインやネーミングについて、権利者に独占権を付与し、産業の発展を図ることを目的に定められております。特許庁への出願、登録が必要です。

第4章:フリーランスを守る、フリーランス新法とは?

フリーランスは、労働基準法をはじめとした労働関係諸法令が適用されないため、企業との取引上、弱い立場に置かれがちな側面もあります。そのため、毎年のように「報酬の未払い、遅延」「不当な取引条件」等、トラブルに巻き込まれる機会が多いことが問題視されてきました。

こうした状況を踏まえ、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(通称:フリーランス新法案)が2023年4月28日に成立しています。

フリーランス新法では、フリーランスが受託した業務で安心して働けるための制約や、事業者が業務委託を行う際フリーランスが不当に扱われないための遵守事項などが定められています。たとえば、下記は一例です。

・契約条件を書面で提供する

事業者がフリーランスに業務委託をする際、契約の条件を書面またはメールで明示しなければなりません。

・60日以内に報酬を支払う

事業者は、フリーランスから成果物を受け取って検品を終えたのち、60日以内に報酬を支払わなければなりません。

▼もし万が一、困ったことが起きてしまったら…

フリーランス・個人事業主の方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口「フリーランス・トラブル110番」があります。

これは、厚労省と弁護士会がタッグを組んだ相談窓口で、相談員が全員弁護士のため、踏み込んだ法律相談に対しても具体的なアドバイスがいただけます。しかも、相談から和解あっせんまで無料で受けられます。ぜひ覚えておいてください! 

第5章:万が一のために、あなたの味方となる士業専門家を見つけよう

フリーランスとして活躍していくうえで、いつかは直面するかもしれない「法的な問題」。それに対応するためには、自身で法律知識を学ぶ必要がありますが、それは非常に時間と労力を必要とします。また、法律は専門的で複雑な領域であるため、間違った理解や解釈をするリスクもあります。

そのためにも、あなたにとって頼れる法律専門家を見つけておくことほど、安心できることはありません。たとえば、弁護士は法律の専門家であり、クリエイターやフリーランスが直面する様々な法的問題に対して、専門的なアドバイスやサポートを提供できます。契約の作成や交渉、紛争解決、知的財産権の保護など、幅広い領域でのサポートを提供し、フリーランスのあなたがビジネスに専念できる環境を約束してくれることでしょう。

また決して法的な問題だけではなく、税金や保険などに詳しい税理士や社労士などのパートナーを見つけることは、あなたのビジネスの拡大に大きな力となります。

▼士業専門家を見つけるためには…

あなたにあった弁護士や税理士、社労士などを見つけるには、可能な限り大勢の専門家に会うことがオススメです。どの分野の専門家も、知識は豊富にあるに違いません。しかし、あなたとの相性が合うかどうか、コミュニケーションが円滑に取れるかどうかは、会って話したり、メールでやり取りをしてみないと分かりません。ネットで検索してみれば、士業専門家を探すプラットフォームやネットワーキングサイトは多数あります。一度試しに登録して専門家を検索してみてください。

また、案件獲得にはフリーランスキャリアの利用をぜひ検討してみてください。これまでの経験やスキルに応じた案件を紹介させて頂きます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次