フリーランスにとって下請法は重要な法律。事前にどのような法律か知っておくことをおすすめします。なぜならクライアントとの取引において「しなければならないこと」「してはならないこと」を定め、立場の弱いフリーランスを守ることにつながるからです。下請法の内容を理解せずにクライアントとの業務委託契約を締結してトラブルになった場合、取り返しのつかない損害を被る恐れもあります。そこで本記事では下請法についての基礎知識や概要、適用対象などを紹介します。
下請法とは?
下請法はフリーランスや中小企業などの下請事業者における立場的に不利な状況を保護する目的として作られた法律。1956年に制定され、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」と呼びます。制定後も時代の変化に伴った働き方に沿う形で幾度となく改定されてきました。
昨今のようにフリーランスや個人事業主の活動人口が増えるにつれ、クライアント間でのトラブルも多々あり、下請法をベースとしたガイドラインなども指定されています。
フリーランスと下請法の関連性
下請法ではクライアントとの取引間において適用対象となる業務は4区分に大別されています。それぞれの取引項目は以下になります。
製造委託
物品の製造や販売を請け負う事業者が、企画・品質・デザインなどを指定し他の事業者に対して製造や加工を委託すること。
修理委託
物品の修理を請け負う事業が、他の事業者に修理作業を委託したり、自社で使用する物品の修理を外注すること。
情報成果物作成委託
Webコンテンツやソフトウェア、動画、デザインなどの情報成果物の提供・作成する事業者が他の事業者へ委託すること。
役務提供委託
運送やビルメンテナンス、ソフトウェアのサポートなどのサービスを提供する事業者が、請け負う役務の提供を他の事業者に委託すること。
資本金額の区分
下請法は資本金の関係により適用されるかどうかが下記の通り変化するので注意が必要です。
取引の内容が政令の定める情報成果物作成委託・役務提供委託及び物品の「製造委託」「修理委託」の場合
・資本金「3億円以上」の事業者が「3000万円以下」の事業者に委託するとき
・資本金「1000万円以上3億円以下」の事業者が資本金「1000万円以下」の事業者に委託するとき
上記以外の情報成果物又は役務に係る場合
・資本金「5000万円以上」の事業者が資本金「5000万円以下」の事業者に委託するとき
・資本金「1000万円以上5000万円以下」の事業者が資本金「1000万円以下」の事業者に委託するとき
クライアントが遵守する義務
書面の作成・交付義務
クライアントが下請業者へ業務発注の際は、直ちに必要事項が記載された3条書面(発注書)を交付すること。
3条書面へ具体的に記載するべき法律で定められた必要事項は以下の通りです。
・クライアントと下請事業者の名称
・製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
・下請事業者の給付内容
・下請事業者の給付を受領する期日(納期)
・下請事業者の給付を受領する場所(納入場所)
・下請事業者の給付内容について検査をする場合、検査完了の期日
・下請代金の額
・下請代金の支払期日
・手形交付の場合は手形の金額及び手形の満期
・一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付、支払可能額など
・電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び満期日
・原材料などを有償支給する場合は、品名、数量、対価や決済方法など
60日以内の支払期日を定める義務
クライアントは下請事業者の合意の下にクライアントが下請事業者の給付内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を物品等を受領した日から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務がある。
取引記録の書類作成・保存の義務
クライアントは下請事業者に対し製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容、下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し2年間保管する義務がある。
遅延利息の支払義務
クライアントは下請代金をその支払期日までに支払われなかったときは、下請事業者に対し物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間についてその日数に応じ当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務がある。
(参照:親事業者の義務 | 公正取引委員会 )
クライアントの禁止行為

クライアントには11項目の禁止事項が課せられていて、たとえ下請業者の了承を得ていても、あるいはクライアントに違法性の意識が無い場合でもこれらの規定に触れるときには下請法に違反することになるので注意が必要です。
・受領拒否
注文した物品等の受領を拒むこと
・下請代金の支払遅延
下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと
・下請代金の減額
あらかじめ定められた下請代金を減額すること
・返品
受け取った物を返品すること
・買いたたき
類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること
・購入、利用強制
クライアントが指定する物、役務を強制的に購入、利用させること
・報復措置
下請事業者がクライアントの不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業 庁へ知らせたことを理由としてその下請事業者に対して取引数量の削減、 取引停止の不利益な取扱いをすること
・有償支原材料等の対価の早期決済
有償で支給した原材料等の対価を当該原材料等を用いた給付に係る下請代 金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること
・割引困難な手形の交付
一般の金融機関で割引を受け取ることが困難であると認められる手形を交付すること
・不当な経済上の利益の提供要請
下請事業者から金全、労務の提供等をさせること
・不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること
(参照:親事業者の禁止行為 | 公正取引委員)
下請法に違反した場合
クライアントが下請法に違反した場合は、次のような罰則やペナルティが科される可能性があります。
正取引委員会の勧告や指導
クライアントが下請法に違反した場合、公正取引委員会から勧告や指導が入ります。違反内容によっては不当に減額した請負代金や支払遅延した代金にかかる遅延利息などを下請業者へ支払い勧告がされる場合もあります。
罰金の科料
クライアントが下上事業者へ必要な書面交付をしていなかった場合や公正取引委員会の必要な立入検査を拒否した場合などは、50万円以下の罰金が科される場合があります。
公正取引委員会のウェブサイトで公表される
下請法に違反したクライアントは公正取引委員会のウェブ上で公表されます。公表がされた場合は企業イメージ毀損ばかりでなく業績への影響も及ぶ可能性もあります。
クライアント間で下請法関連のトラブルにあった場合
フリーランスで活動しクライアントと取引している際に違法行為やトラブルが発生した場合の対処法を以下にて紹介します。
まとめ
下請法はフリーランスとの関連がある法律であり、また下請法の基礎知識や概要について解説しました。立場の弱いフリーランスを保護する下請法ですが、あらかじめ正しい知識で理解し万が一のトラブルに備えて有効活用できる対応力が必要になります。取引条件などで少しでも悩みや不安なことがある場合には、まずは「かけこみ寺」などに相談をしてみましょう。
また、案件獲得にはフリーランスキャリアの利用をぜひ検討してみてください。これまでの経験やスキルに応じた案件を紹介させて頂きます。