SESとはシステムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)の略。IT企業が自社のエンジニアを他の企業に派遣し、システム開発やメンテナンスなどの業務を行うサービスを指します。
近年、インターネット上では

SES やめとけ
という声が数多く見られるようになりました。
これらの否定的な意見が広まっている背景には、SES業界の構造的な問題が存在します。本記事では、SESの実態と問題点を詳細に解説しながら、ITエンジニアにとってより良いキャリア選択のヒントについて探っていきます。
「SESはやめておけ」と言われる理由
SES業界には、エンジニアのキャリアや生活に影響を与える様々な問題点が存在します。「SESはやめておけ」と言われる理由について詳しく見ていきましょう。
まず、SESの最大の問題点として挙げられるのが、低賃金と中間搾取の問題です。SES企業は、クライアント企業から受け取る報酬の一部を中間マージンとして取り、残りをエンジニアに支払う仕組みになっています。この構造により、エンジニアの手取りが低くなる場合があります。
スキルアップの機会が不足している点も大きな問題です。多くのSES案件では、クライアント企業の既存システムの保守や運用が中心となるため、最新技術に触れる機会が極めて限られています。結果として技術力の向上が難しく、キャリアの長期的な成長が阻害される可能性が高くなります。IT業界の急速な進歩に追いつけず、時代遅れの技術しか扱えないエンジニアになってしまうリスクも存在します。
SESの雇用形態は案件ベースになるため、一つの案件が終了すると次の仕事が保証されていません。場合によっては仕事がなく「待機」になることも。その間は自習して次の案件がアサインされるのを待つことになります。「待機」はエンジニアに大きな精神的ストレスになりますし、キャリア形成の機会も損なう恐れがあります。
SESで働くエンジニアは長時間労働やサービス残業を強いられるケースが多々あります。クライアント企業の厳しい要求に応えるため、正規の労働時間を超えて働かざるを得ない状況に陥りやすいのです。このような労働環境は、ワークライフバランスを崩壊させ、エンジニアの健康面にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
キャリアパスの不透明さも、SESの大きな欠点の一つです。同じ案件に長期間携わることが多いSESでは、管理職への昇進や専門性を高める機会が限られていることがほとんどです。結果としてエンジニアとしての成長が停滞し、将来のキャリアに不安を抱える人も少なくありません。
SES企業で働くメリット


一方でSES企業で働くメリットもあります。詳しく見ていきましょう。
様々な業界のクライアント企業のプロジェクトに参加する機会があり、多様な業界知識やビジネスプロセスを学ぶことができます。また、異なる規模や性質のプロジェクトに携わることで、幅広い経験を積むことができます。
異なるプロジェクトに参加することで、様々な技術やツールに触れる機会が増えます。これにより、特定の技術に特化するだけでなく、多様なスキルセットを身につけることができます。
多様なプロジェクトを経験することで、自分の適性や興味がある分野を見つけやすくなります。これは、将来のキャリアパスを決定する上で貴重な機会となります。
様々なクライアント企業や同僚のエンジニアと協働することで、業界内のネットワークを広げることができます。これは、将来のキャリア展開やフリーランスへの移行を考える際に役立ちます。
一部のSES企業では、プロジェクトベースの働き方を提供していることも。プロジェクト間のインターバルを利用できるので、長期休暇を取りやすかったり、自己研鑽の時間を確保しやすくなる場合があります。
IT業界未経験者や新卒者にとって、SES企業は業界への入口として機能することがあります。基本的なスキルを身につけながら、実務経験を積むことができます。
多くのSES企業では、社員のスキルアップをサポートするための研修プログラムや資格取得支援制度を設けています。会社が教育に必要な必要を負担してくれるので、個人のスキル向上に繋げることができます。また、定期的な面談の機会を設ける企業も多く、どんな案件に挑戦したいのか、どんなスキルを身につけたいのか、要望も踏まえて案件をアサインしてくれます。
SES企業を通じて、個人では参加が難しい大規模なプロジェクトや有名企業のプロジェクトに参加できる可能性があります。個人だとなかなか関わることができない案件に関わることで、大きく成長できるでしょう。
SES企業が案件を獲得してくれるので、自分で営業する必要がありません。特にフリーランスの場合は、自分でポートフォリオを作成し、営業する必要があります。請求などの事務手続きも自分で行う必要がありますが、SES企業に頼ればそのような業務も代行してもらえます。空いた時間を使って技術力の向上に集中できます。
SESを避けるべき人
SESのメリットがある一方で、特定のキャリア志向や価値観を持つ人にとっては、SESは適切な選択肢とは言えない場合があります。例えば、長期的なキャリア成長、専門性の追求、安定性、ワークライフバランス、創造性、グローバル展開、強い帰属意識を重視する人は、SES以外の選択肢を検討した方がいいかもしれません。
ただし、個人の状況や優先順位は時と共に変化する可能性がありますので、定期的に自身のキャリアゴールを見直し、それに適した選択をすることが重要です。また、SESでの経験を糧に、将来的により自分に適したキャリアへ移行することも一つの戦略として考えられます。
SESに変わるキャリアの選択肢
では、SESに向いていない人たちはどのようなキャリアを選択すれば良いのでしょうか。SESに代わるキャリア選択肢は多数存在します。詳しく見ていきましょう。
一般企業の情報システム部門で社内SEになることで、安定した雇用と収入を確保できます。会社によって業務内容や労働環境はさまざまですが、一般的に自分たちで納期や業務量を調整しやすく、クライアントに振り回されるリスクをおさえられます。
高度なスキルを持つエンジニアにとっては、フリーランスや個人事業主として働くことも魅力的な選択肢となります。フリーランスは自由度が高く、高収入を得られる可能性がありますが、一方で仕事の安定性には欠ける面もあることを認識しておく必要があります。
技術力を活かしながら、急成長する環境で働きたい人にはスタートアップへの参画がおすすめです。リスクは高いものの、成功した際の報酬も大きく、幅広い経験を積むことができます。また、自身のアイデアを形にする機会も得られるかもしれません。
経験を活かしてIT教育や研修業界で働くことも一つの選択肢です。次世代のエンジニアを育成しながら、自身のスキルアップも図ることができる点が魅力的です。また、教育者としての新たなキャリアパスを築くこともできるでしょう。
SESからキャリアチェンジを目指す方法
現在SESで働いているエンジニアが、より良いキャリアを築くためには具体的にどのような行動を取るべきでしょうか。ここでは、SESからのキャリアチェンジための3つの重要なステップについて解説します。
現在SESで働いており、キャリアチェンジを考えているエンジニアには、以下のようなアプローチをおすすめします。まず、スキルアップに力を入れることが重要です。最新技術の学習を怠らず、資格取得や個人プロジェクトに積極的に取り組むことで、市場価値を高めることができます。オンライン学習プラットフォームなどを活用し、継続的な学習習慣を身につけることも効果的です。
人脈を築き、キャリアアップを重ねることにも注力しましょう。IT業界のイベントや勉強会に積極的に参加し、同業者とのつながりを広げることで、新たな機会を見出せる可能性があります。SNSを活用して業界内の人脈を築くことも大切です。また、経験豊富なメンターを見つけ、キャリアアドバイスを得ることで、より良い選択ができるようになるでしょう。
転職活動を行う際は、自身のスキルと経験を客観的に評価することが重要です。その上で、希望する職種や業界の市場価値を徹底的に調査し、自分の価値を適切にアピールできるよう準備しましょう。面接対策と自己PRの準備も怠らず、自信を持って臨むことが成功への近道となります。
主体的にキャリアを設計し、成長し続けよう
SESが様々な問題点やリスクを抱えていることは否めません。一方で、SESにもメリットがあり、特定の状況や志向を持つ人にとっては適切な選択肢となる場合もあります。重要なのは、自身のキャリアゴールを明確にし、それに基づいて最適な選択をすることです。短期的な利益や便宜だけでなく、長期的な視点でキャリアを考えることが必要不可欠です。
また、常に自己研鑽を怠らず、業界のトレンドや自身のマーケット価値を把握しておくことが大切です。必要に応じてキャリアチェンジを検討し、より良い環境で自身の能力を発揮できるよう努めましょう。キャリアチェンジには不安がつきものですが、長期的な視点で見れば、自身の成長と幸福につながる可能性が高いのです。
IT業界は技術の進歩とともに常に変化し続けます。変化に柔軟に対応し、自身の成長と業界の動向を常に意識することが、長期的な成功の鍵となるでしょう。キャリア選択に正解はありません。各個人の状況、価値観、目標によって最適な選択は異なります。重要なのは、十分な情報収集と自己分析を行い、自分にとって最良の選択をすることです。SESであれ他の選択肢であれ、自身のキャリアを主体的に設計し、常に成長を続ける姿勢を持ち続けることが、ITエンジニアとしての成功への近道となるはずです。
また、案件獲得にはフリーランスキャリアの利用をぜひ検討してみてください。これまでの経験やスキルに応じた案件を紹介させて頂きます。